うつ病は無条件の自信を育てるチャンス

うつという病気は、さまざまな自信の種が奪われる病気です。

仕事も勉強もできなくなります。容姿に気を配れなくなります。人に好かれるような明朗な雰囲気を持てなくなります。人を助けたり、人が喜ぶようなことをしたりする余裕がなくなります。 そして、重症になれば、一日中寝ているしかできなくなります。

ありとあらゆる自信の種、自分が人に受け入れられ、存在を許される理由を奪い取られて、まさに「そこに存在するだけ」になるのです。 そうして、いったん徹底的に条件付きの自信を砕かれた患者さんは、今度は「自分の存在そのものが無条件にすばらしいんだ」という事実に目が開かれていきます。

なぜ根拠なしに自分の価値を信じられるのか

それは、他の人に大切に扱われるからです。私たちは、他の人との関係の中で、 無条件に自分を信じる力を養うのです。

赤ちゃんが生まれたとき、受け止めてくれたお医者さんや助産婦さんの温かい手がありました。 看護婦さんが、宝物を扱うようにていねいに体を拭いてくれました。  そして、お母さんの胸元に抱かれ、お母さんは涙を流して誕生を喜んでくれます。 赤ちゃんは、まだ言葉は分かりませんが、雰囲気から「自分は大切な存在なのかも知れない」と思うのです。

分娩室の外で、お父さんと対面します。お父さんは震える手でだっこしてくれ、 「君の誕生を、ずっと待ってたんだよ」と言ってくれます。自分は待ってもらえるほど大切なんだと、赤ちゃんは感じます。

連絡を受けた母方のおじいちゃんとおばあちゃんがやってきます(お母さんの実家近くで生むことが多いでしょうからね)。どっちが先にだっこするかでケンカするかも知れない。すると赤ちゃんは「奪い合いされるほど、自分は大切なんだ」 と思います。

数日後、遠くに住んでいる、父方の祖父母がやってきます。まだ遊べもしないのに、しこたまおもちゃを抱えて。また赤ちゃんは、自分が大切にされていると感じます。

しばらくたって、お母さんに抱かれて外出するようになると、近所の人たちが寄ってきて、「かわいい」と言ったり、なでたり、だっこしてくれたりします。

幼稚園に行く頃になると、朝友だちが迎えに来たり、先生が「○○ちゃん、待ってたよ~」と言ってくれたりします。

このように、私たちは、自分が生まれたこと、自分がここにいること、自分が自分であることを喜ばれてきました。だから、根拠なしに「自分は大切だ」と信じることができるのです。だから、今日、私たちはこうやって生きているのです。

関係によっていやされる

いつの間にか条件付きの自信ばかり追い求めるようになり、くたくたに疲れてしまったうつ病の患者さんをいやすのは何でしょう。 それは、すでに学んだように、休息や薬や「良い加減」の考え方を身につけることなどです。

そして、その他に、生まれたばかりの赤ちゃんに対して家族が向けてくれるような、無条件の「あなたは大切だ」という関わりです。 元気があっても、無くても。 仕事に行っていても、行っていなくても。 身だしなみがしっかりできていても、いなくても。 こちらの期待に添うようなことをしても、しなくても。 それでもあなたは、私にとって宝物だ。 それでもあなたは、大切な人だ。 それでもあなたは、私の大好きな人だ。

そのような思いをこめて関わっていくことが、患者さんに少しずつ本当の自信、 無条件の自信を与えていきます。

こころと口で語り続けましょう

「あなたは大切だ」と口に出しても、患者さんはそう簡単に信じてくれないでしょう。そういう病気ですからね。 でも、患者さんが信じようが信じまいが、あなたは患者さんのことを大切に思っていますよね?

ですから、そう心の中で唱え続け、口にし続けてください。 すると、あなたの患者さんを大切に思っている思いが、言葉だけではなく、眼差しや雰囲気から患者さんに伝わっていき、患者さんを励ましていくのです。

親密な関係

うつ病によって学ばされた無条件の自信は、今までよりもさらに親密な人間関係を生み出してくれます。患者さんにも、そして患者さんに関わってきたあなたにも。

条件を満たすための戦い

条件付きの自信のみを追い求める生き方というのは、人間関係が競争になってしまいがちです。もちろん社会生活に競争はつきものですが、さりとてすべての人間関係が競争になってしまっては、気の休まる暇がありません。

また、条件付きの自信のみを追い求める生き方というのは、人間関係が操作的になりがちです。どういうことかというと、「まず自分が相手の役に立ったり、気に入るようなことをしたりする。そして、その見返りとして相手に自分を受け入れてもらう」ってことです。

要するに、受け入れてもらうために、気に入ってもらえるようなことをする、という人間関係だということです。

役に立ったごほうびとして大切にされるとか、気に入るようなことをしたときだけ大切にされるとかいうのは、逆に役に立たなかったり、気に入るような言動ができなかったりすれば、邪険にされるということです。これはとても不安で、疲れる人間関係ですよね?

疲れる人間関係

このように、無条件の自信を追い求める生き方をしていると、どうしても人間関係が「条件を満たすための戦い」になってしまいがちなのです。

これでは、あまり心が安まる関係とは言えません。

うつ病を通して学ぶ新しい人間関係

うつ病の患者さんと、患者さんの周りの人たち(特に家族であるあなた)とは、病気の治療を通して、無条件に相手を愛し、愛されるということを学んでいきます。
なぜなら、無条件に愛し、愛されることを学ぶことによって、本当の自信を回復して、うつ病が良くなっていくからです。

家族が一つにまとまる

うつ病を通った患者さんやその家族は、他の人よりも優れているとかいないとか、相手がこちらの期待通りに行動するとかしないとかにかかわらず、相手の存在を受け入れ、喜び、愛し、大切にすることができるようになっていきます。

ですから、うつ病を乗り越えた家族は、ひとつにまとまります。家庭が本当にほっとできる場、明日を生きる元気や勇気が与えられる場になります。

新しい人間関係

家族の間で学んだ新しい人間関係は、家族の間だけにとどまりません。家庭の外の人たちの関係も、とても暖かく、楽なものになっていきます。競争したり、操作しようとがんばる必要がないからです。

うつ病は、患者さん本人にとっても、周りの家族にとっても、非常に苦しい病気です。今、あなたは、悲しい思いをしていらっしゃるかも知れません。
しかし、この病気を通して、あなたや患者さんは、今まで味わったことのない、温かい、力に満ちた人間関係を体験することができるようになるでしょう

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