無口なうつ病患者への上手な対応方法

これまで書いてきたような対話のポイントは、スクールのセミナーや、いろいろな団体の研修会でもお話しさせていただいています。
すると、たいていこういう質問が出てきます。「うちの子、しゃべらないのです。そうしたら、フィードバックも、共感もできないのでは?」

たしかにそうですよね。
特にうつ病の患者さんは、極端に口数が減ります。しゃべる気力が無くなりますし、わき上がってくる言葉は否定的なことばかりですから、それを家族に聞かせたくないと思うからでしょう。

ですから、今回学んだような技法を使おうと思っても、そもそも対話自体が成立しないということもあるでしょう。そうなると、どう対応したらいいか、迷ってしまいますよね?ここでは、沈黙への対応の仕方を学びましょう。

無理にしゃべらせない

うつ病の患者さんにとって、無理強いされるのはとてもつらいことです。
患者さんが黙っているのは、しゃべるのがしんどかったり、混乱しすぎていたりして、しゃべりたくてもしゃべれないのです。
ですから、しつこく話しかけて対話しようとしないでくださいね。

放っておかない

ただし、どうせ話をしてくれないからと、放っておくのもよくありません。「見捨てられた」「嫌われた」と思って、絶望してしまいますから。

あなたにはあなたの生活があるし、息抜きもしないとストレスがたまりますから、ずーっと一緒にいるわけにはいきません。でも、たとえ患者さんがしゃべらなくても、短くていいですから、毎日一緒にいる時間を作ってあげてください。

もちろん、相手が一緒にいることを嫌がれば別ですが、それでも次の日また挑戦してみてください。患者さんとのつき合いは、「しつこくあっさりと」が極意です。

でも、しゃべらない患者さんと一緒にいるだけだと、手持ちぶさたですよね?
いったい一緒にいて何をすればいいでしょうか。

声にならない声を傾聴する

実は沈黙している患者さんは、言葉には出していないだけで、頭やこころの中では、いろいろなことを考えたり感じたりしています。自分ではどう整理をつけたらいいのか分からないほど、いろいろな考えが嵐のように渦巻いていることも多いのです。
その「こころのつぶやき」を聴き取ってください。

はい、難しいことを申し上げています。「超能力者じゃあるまいし、こころの中なんて読めないよ」。その通りです。もちろん、超能力者のように完全な読心術を使えと言っているわけではありません。

私たちは人の心を読めませんが、それでも表情やボディランゲージを読み取って、相手が何を考え、感じているか、読み取ろうとしますよね?

たとえば「大丈夫」と言いながら、涙を浮かべていたり、手が震えていたり、唇をかみしめていたりすれば、「これは大丈夫じゃないな。よっぽどつらいんだろうな」と思うじゃありませんか。

励まそうとか、何とかしゃべらせようとか、しなくてかまいません。ただ一緒にいて、表情やボディランゲージを観察しながら、患者さんの気持ちを感じ取ってあげてください。

声にならない声をフィードバックする

表情やボディランゲージから患者さんの気持ちが何となく感じ取れたら、それをフィードバック(確認)してみましょう。
「苦しそうだね」とか「とっても悲しい?」とか「疲れて動けないって感じ?」
とか……。

このとき、あまり矢継ぎ早に話しかけないでくださいね。なんとなく「お前も話せ」とプレッシャーを与えているような感じになりますから。こちらも充分に間を取りながら、ポツリ……ポツリ……と話しかけるようにします。

声にならない声に共感する

声にならない声が聞こえてきて、患者さんの気持ちが伝わってきたら、それに共感の言葉を添えてあげてください。
「そうだよねぇ」「苦しいよなぁ」「どれだけつらいだろうねぇ」というふうに。
これも急かさないように、ポツリ……ポツリ……でいきましょうね。

そばに座って、スキンシップをするのもいいでしょう。口に出さないように、こころの中で「そばにいるよ。大切に思っているよ」と語りかけながら、肩や背中を優しくさすってあげてください。

もちろん、患者さんが嫌がったらやめてくださいね。
「口に出さないように」というのは、絶対ではなくて、たまにならOKです。むしろ、口に出した方がいいです。
ただ、沈黙しているときは、頭の中でいろいろごちゃごちゃと考えたり、感情が交錯したりして混乱していることが多いので、あまり頻繁に話しかけるとよけいに混乱させてしまいます。

ですから、基本的にはこころの中で「そばにいるよ。大切に思っているよ」という言葉を唱えます。そして、ときどき(別に決まりはありませんが、最初は目安として15分程度あけてみましょう)口に出す……というふうにしましょう。

スポンサーリンク

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする