うつ病患者に自分の気持ちを上手に伝えるには?

患者さんに対して何か言いたくなったときは、ちょっと立ち止まって自分のこころを整理してみましょう。私たちは、案外自分が何を伝えたいのかが分かっていません。

自己チェックのポイントは3つ

(1) 自分が困っていることは何か
(2) それはなぜか
(3) 相手にどうしてもらいたいのか
です。

相手に何か一言言いたいときというのは、たいていの場合、こちらが困っているときです。そして、困っているのには、当然の理由があります。

患者さんの気持ちを聴き取り、さらに「そう感じるのは当然だよ」という思いでさらに耳を傾けて、その当然の理由を探すつもりで聞いてください。
そして、患者さんがさまざまな気持ちを持つのが当然であるように、あなたがいろいろな気持ちを持つのにも当然の理由があります。

たとえば、患者さんが「死にたい」とつぶやいたとしましょう。
・何が困りますか? そうです。患者さんが死んでしまったらどうしようと不安になるのです。
・それはなぜ? それは、患者さんが大切な存在だからです。だから自殺されて、この地上からいなくなってしまうのが怖いのです。

たとえば、夜遅くまで、くどくどとつらい気持ちを聴かされ続けたとしましょう。
・何が困りますか? 疲れてしんどいのです。
・それはなぜ? 一日いろいろなことをやって来て、心も体も休みを求めているからです。

あなたの「うわぁ、もういい加減にして欲しいな」という気持ちの裏側にある、本当の気持ちとその理由。それをじっくりと聴き取ってください。
そうでないと、「いい加減にしてよ!」という攻撃的な言い方をしてしまうことになります。そうすると、患者さんには、あなたの本当の気持ちが伝わらず、ただ「攻撃された。嫌われた」としか思ってもらえません。

どうしてもらいたい?

今、自分が何に困っていて、それはなぜかを考えました。次は、「じゃあ、相手にどうしてもらったら、今よりも満足?」と考えてみるのです。患者さんへのリクエストですね。

たとえば、「死にたい」とつぶやく患者さんについては、
・死なないで欲しい。少なくとも、自殺はしないと約束して欲しい。

たとえば、夜遅くまで、くどくどとつらい気持ちを聴かせる患者さんについては、
・今日のところはもう休ませて欲しい。
……のように。

3つのポイントをはっきり伝える

①困っていることと、②その理由、そして③リクエストがはっきりしたら、あとはそれをできるだけ誤解のないように伝えます。

誤解なくというのは、持って回ったような言い方ではなく、この3つのポイントをストレートに伝えるということです。
つまり、相手にして欲しいことをはっきりと伝え(これが③に当ります)、その理由を述べるのです(これが①と②です)。

たとえば、「死にたい」とつぶやく患者さんに対しては、
「大切なあなたに死なれたら、お母さんは悲しくてたまらない。あなたがいなくなったらどうしようって、お母さん、毎日不安でたまらないんだ。だから、どうか自殺だけはしない、死んで楽になるっていう方法だけは絶対にとらないって約束してちょうだい。お願いだから」。

夜遅くまで、くどくどとつらい気持ちを聴かせる患者さんに対しては、
「一日中仕事をしてきて、実はとても疲れているんだ。明日も朝が早いしね。もっと君の話を聴いてやりたいと思うんだけど、もう疲れて集中力が保たないんだよ。今日のところはもう寝かせてもらえないかなぁ」。

リクエストの仕方

相手にして欲しいことを伝える際、いろいろな表現方法がありますが、その中でも、相手が受け取りやすい表現方法を選ばないといけません。

「どうして~してくれないの?」とか、「家族を愛してるなら、~するでしょ、ふつー」っていうような、ちょっと嫌みな言い方はしないようにしましょう。
こういう表現って、家族や恋人など、近い関係の人同士ではよく聞かれますね。

でも、実はこれほど役に立たないコミュニケーション法もありません。本当の気持ちはほとんど伝わらないだけではなく、どんどん関係が悪くなりますから、使わないようにしましょうね。

ストレートな表現のいろいろ

ストレートに相手にやって欲しいことを伝える表現にも、いろいろあります。
①やりなさい。 ……命令モード
②やってみようよ。 ……お誘いモード
③やってみたら? ……提案モード1
④やってみたらいいと思うんだけど、どう? ……提案モード2
④やってください、お願いします。 ……お願いモード1
⑤やってもらえないかなあ。 ……お願いモード2

今回のように、あなた自身が困っていて、相手に行動を変えて欲しい場合には、④⑤のお願いモードの表現方法を使うのが無難です。「死ぬな」「いい加減に寝かせろ」ではなく、「死なないで」「寝かせてもらえないかなあ」です。

あなた自身はどうですか? 有無を言わさず命令されたいですか? それとも、謙遜にお願いされたいですか?

特に、自殺に関しては、「絶対に自殺しない」という約束を取り付けることが大切です。100%自殺を防止することはできませんが、それでも家族との約束は、かなり強力に自殺の実行を思いとどまらせますから。

うつ病の人は、生真面目な人が多いので、約束は一生懸命に守ろうとします。「家族のため」というしがらみは、自殺に対するブレーキになります。
そして、その約束を取り付けるときは、ただ単に「死んじゃダメ」と命じるのではなく、
「私たちは、病気でも、働けなくても、とにかくあなたに生きていて欲しいんだ。それはあなたが大切な存在だから。だから、自殺されたら悲しい。だから、死なないで欲しい」
と、「あなたが大切だから」という理由をしっかりと伝えてあげてください。

相手の気持ちに配慮しましょう

患者さんは、死んで楽になりたいのです。一晩中だって、このつらい気持ちを聴いてもらいたいのです。
それなのに「死なないと約束して欲しい」「今日のところは、もう眠らせて欲しい」とお願いするわけです。きっと患者さんは切ない思いをすることになるでしょう。

でも、お願いしないと、今度はあなたの方がつぶれてしまいます。だから、「患者さんに悪いから」と、我慢を続けるのはよくありません。お願いはしないといけません。

ですから、ただ一方的にお願いするだけでなく、相手の切ない思いを共感したいですね。そして、「申し訳ないけれど」という思いを伝えられたらいいですね。

さらに、別の面でカバーできることがあれば、それを提案したいですね。
たとえば、
「大切なあなたに死なれたら、お母さんは悲しくてたまらない。あなたがいなくなったらどうしようって、お母さん、毎日不安でたまらないんだ。だから、どうか自殺だけはしない、死んで楽になるっていう方法だけは絶対にとらないって約束してちょうだい。
こんなお願いをするのは、お前にとってつらいことだと分かるけど、それでも、私たちは死なないで欲しいんだ。酷なお願いをして申し訳ない。だけど、死なないって約束してちょうだい。お願いだから」。

「一日中仕事をしてきて、実はとても疲れているんだ。明日も朝が早いしね。もっと君の話を聴いてやりたいと思うんだけど、もう疲れて集中力が保たないんだよ。本当に申し訳ない。明日またしっかりと聴かせてもらうから、今日はもう寝かせてもらえないかなぁ」。
のように。

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