うつ病におけるリフレーミングとは

私たちの感情は、状況が生み出すのではなく、状況をどう受け取るかという、私たちの受け取り方・考え方が生み出します。

たとえば、子どもに「お父さん/お母さんのバカっ!」と言われたとします。
・「バカにされた」と受け取れば、腹が立つでしょう。
・「嫌われた」と受け取れば、悲しくなるでしょう。
・「何かを分かって欲しいと訴えているんだな」と受け取れば、冷静になるでしょう。

そして、感情が行動を左右します。
・腹が立てば、「なんだその言い方は!」と逆ギレするでしょう。
・悲しくなれば、涙を流したり、絶句したりするでしょう。
・冷静になれば、何を訴えているのかを聴き取ろうとするでしょう。

フレームとは

このテーマである「リフレーミング」とは、「フレームを変える」という意味です。フレームとは、「準拠枠」のことで、難しく説明しようと思えばいくらでもできますが、ここでは「物事のとらえ方」と考えてみてください。

リフレーミングとは、相手が今までとは違う受け取り方、とらえ方、考え方ができるようにする関わり、ということです。

専門的には、リフレーミングにはいろいろな技法があるのですが、別にあなたは精神科医やカウンセラーになりたいわけではないですから、ここでは家族が患者さんのためにできるリフレーミングの方法を紹介しますね。

リフレーミングの実際

これは、「アドバイスの仕方」のところでも触れましたが、
「こういう見方もできるんじゃないかな?」「私は、こんなふうに受け取ったんだけど、どう思う?」
と、新しいものの見方を「提案する」やり方です。

たとえば、「うつで、子どもたちに優しく接してあげられない自分は、ダメな母親だ。こんな自分なんかいない方が子どもたちにとって幸せなんだ。もう死んでしまいたい」と嘆く妻に対して……。

「でも、子どもたちは君と話をしたあと、うれしそうにしているんだよね。子どもたちは、病気だろうと何だろうと、君がいてくれることが幸せだって感じてるんだって僕には思えるんだけど、どうだろう?」

質問による誘導

うつ状態に陥ると、物事の否定的な面ばかりに目が行って、肯定的な面を見過ごしにしてしまいがち。
そんなときは、質問によって、肯定的な面に注目できるようにしてあげるといいでしょう。

たとえば、先ほどのように嘆く妻に対して……。
「子どもたちが、君と一緒にいてうれしそうにしていたことって、最近あった?」

ないと言われたら?

このケースで「ない」と言われれば、「そっかぁ」と傾聴し、新しい受け取り方なんかできないほどに苦しい胸の内を共感していきましょう。あるいは、さらに先ほどのような新しい見方を提案するのもいいですね。
「君はないって言うけれど、さっきだって、君と話をしたあとうれしそうにしていたよ?」

これは、質問による誘導の変形です。割合と使い勝手のいい言い回しなので、憶えておくといいですよ。
それは、「そんなに~にもかかわらず、~なのはなぜ?」という言い回しです。
変形として、「~にもかかわらず、~できる力はどこから来るの?」という言い回しも使えます。

たとえば、「もう苦しくてたまらないから、死んでしまいたい」と漏らす夫に対して、
「死にたいほどに苦しいのに、それでもこうして生きていてくれるのはなぜ?」

おそらく、「家族を悲しまたくないから」とか「病気に負けたくないから」というような前向きな答えが出てくるでしょう。そうしたらさらに、「すごいなあ。病気なのに、どこからその力が出てくるの?」と続けます。

仮に「死ぬ勇気がないからさ」というような、自虐的な答えが返ってきた場合には、「でもそれは、私たちのことを大切に思ってくれているからだって、私には思えるんだけど、どう?」と、さらにリフレーミングすればいいでしょう。

注意点

リフレーミングの技法は、「誘導尋問」と紙一重です。患者さんが「無理やり新しい考えを押しつけられようとしている」と感じれば、かえってストレスを与えて逆効果になってしまいます。

また、弱音を吐くたびごとにリフレーミングされたのでは、患者さんは安心して弱音を吐けなくなってしまいます。その結果として、弱音を吐かなくなっても、それは弱音そのものが無くなったわけではありませんから、患者さんは内面でよけいに苦しい思いをすることになります。

ですから、傾聴・フィードバック・共感を引き出す質問を行ない、充分に患者さんの弱音に共感してから、時々リフレーミングを使ってみる、というふうにした方がいいです。

治すのはあなたの仕事ではありません

繰り返しになりますが、病気を治すのは、医師やカウンセラーの仕事です。家族であるあなたの仕事は、患者さんがあなたにとって大切な存在だということを伝え続けることです。
決して、「治すため」にリフレーミングの技法を使わないようにしましょうね。

うつ病の患者さんと向き合うときには、焦らないことが大切です。焦りは、あなたを不安にさせ、怒りを引き出し、それは患者さんをよけいに不安にさせますから。

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